あっとほーむ 直送版
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副園長小川から一言です 菊薫る「文化の日」を迎えるにあたって、いつも思うのですが、今年も利用者のすばらしい作品(絵画・陶芸・手芸・籐細工等)が園内の会場に展示され、たくさんの御来園の方々の御高覧をいただくことになりました。一年から半年、在るいはもっと以前から「こつこつ」と丹精こめた作品は本当に貴重な「生きる力の結集」ではないでしょうか。(副園長 小川茂) line
副園長小川から一言です line line
平成14年 11月号
  みんなの声 芸術の秋
※あっとほーむ直送版では発行当時のままに配信しているため、一部に古い情報が使用されておりますことを予めご理解いただきますようお願い申し上げます。


「絵をかくこと」と「生き甲斐」緑寿園絵画療法講師 岩瀬 静

 緑寿園では、週三回(火木土)絵画療法を行っております。と言いましても気楽に絵を描いて楽しむことをモットーとしていますが、実際には皆さん真剣で全精力を打ち込んで描いているというのが正直なところです。

 まず、はじめに絵画療法について説明しますと、絵を描くという活動を通して、人間に与える身体的精神的な影響や効果によって、生きる喜びや充実感を味わっていただくというものです。
 では、どのように一度も絵を描いたことのない人に描いていただくかですが、「まるが描けますか」と質問します。「その位描けますよ」とたいていの人の返事です。そうなればしめたもの、まるがりんごになり、人の顔になり模様になったりして美しく彩色される。更に物には明暗があり背景があることを感じていき、次には風景が描きたくなり、名作への模写へと進展していくと言った具合です。更にその作品は多くの仲間に見て貰い、皆さんから認められ賞賛されるという経験をするのです。

 片麻痺の障害があり、最近始めたばかりのAさん(男性)、はじめは、りんごやみかんの写生でしたが、すぐにそれには物足りなくなり、有名な日本画を自己流にアレンジして見事な作品に仕上げたので驚きました。また、一度も絵を描いたことのないKさん(女性)は、はじめは不安そうで落ち着かない様子でしたが、自分の好きなデザイン的な作品の模写を始めたところ、一作毎に自信が湧き、今では他の人を励まし、明るくなり「生きていて良かった」と感想を聞くことが出来ました。また、九〇歳代でも若い人と同様な意欲を持って率先して大作に取り組んでいる人もおりますし、社会の出来事にも常に意識的に注意を払って作品に表現しようとする人もおります。そうした作品の中に、「アフガニスタンの女性と子供たち」や東南アジアの貧困さを新聞から見つけ「ゴミを漁る子供たち」など、いつもまなざしは世界に向けて発信しておられます。

 先日皆さんに絵を描くことについてお尋ねしました。次がその答えです。「夢中になれる」「面白い」「楽しい」「集中することで嫌なことは一切忘れることができる」「生きていて良かった」「一番幸せな時間」「少し位身体がつらくても絵が完成することを考えると、いつのまにか席について手を動かしている」「薬よりよく効く」「描いている時は芸術家の気分で、自分が一番うまいと内心思う」「いつもこの時間が楽しみ」「描いている時はつらいが、完成すると喜びで一杯になり、やればなんでも出来ると思えるようになる」「無心になれるので時が経つのが速い」「作品は生きている証し」等々。

 皆さんが絵を描くことによって、人間として真の喜びや貴重な時間を経験され、作品を通して互いに理解し支え合える良い友を得、充実したものを感じ取って下さり、それを共有できることは私にとっても感謝です。

毎日が楽しい! 緑樹園ご利用者 榎本光子
 緑寿園三階にお住まいの榎本様は、今日は陶芸、明日は絵画と、嬉々として、二階にある作業療法室に毎日のように午前も午後も通われています。
 榎本様は、昭和六十二年、六十七歳の時に脳血管障害のため右半身が不自由になり、同年、緑寿園にお入りになりました。その後、陶芸や絵画に参加することになりました。利き手だった右手が利かなくなったため、左手だけを使っての創作活動です。粘土を削ったり、細かい線を描いたり、なかなか思うようにはいかず、大変な作業です。しかし、どの作品を見ても、本当に左手だけで創りあげたのかとびっくりするような出来映えです。現在は十一月に行なわれる文化祭の出展を目指し、クレパスで描いた自画像を制作中です。陶芸では如来像を出展する予定です。

 毎日が楽しく、次はこんな作品を作ろうと、日々のちょっとした瞬間にアイデアが次々に浮かんでくると笑顔で話され、毎日、粘土やクレパスを扱うため、手がきれいになる暇がないと、ご自分の手を見せてくれました。




  みんなの声 芸術の秋

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