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夏の宝物 生活改発室 越智 友子 |
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昨年、私は学生最後の夏休みに、「沖縄・自給自足キャンプ」というものに参加した。このキャンプの企画者は、高橋歩という三十代の男性。彼は、夫婦で二年間世界旅行をし、その間写真を撮り、詩を書き、それらを自伝本として出版しているエッセイストとして有名だ。
別名「島プロジェクト」とも言われるこのキャンプは、日本中から参加者を集い、九日間を一期として一年に四回催される。一期の定員は約二十名。私は八期生としての参加であった。
文明の利器はひと時おさらば。携帯電話の電波も通じないやんばるの森の奥、高橋歩を中心に集まったキャンプスタッフが、ゼロから切り開いたキャンプ場で、初対面同士の二十人の仲間達が九日間、自給自足体験をする。
私達は三つのチームに分かれ、畜産、農業、漁業の三つの作業をローテーションするというプログラムをこなした。
畜産では、牛や山羊達の小屋掃除、餌となる草の刈りや、糞を集めて発酵させ、畑の肥料にするといった作業だ。子牛にミルクをあげた時の可愛さは忘れられない。
農業では、沖縄の透き通る碧い海が漁の舞台。投げ網漁法を習い、魚をいかにして追い詰めるか、チームの皆で作戦を立てる。しかし、上手くは捕れず、その日の夕食のおかずが寂しくなってしまったり・・・。大漁を成し遂げたチームは、皆から拍手喝采を浴びていた。
一番印象深いのは、育てていた鶏を締めたことだ。「かわいそうだ」と泣き出す子もいたが、私達は他の生き物から命を頂いて生かされていることを忘れてしまっていると気づいた。鶏肉はパック詰めの姿で生まれたのではないということを。「いただきます」の意味を想いながら、私達は鶏を残さず食べた。美味しく食べる、残さず食べるということが、せめてもの感謝の示しとなるように。
ものの大切さを知らない時代に生まれた私は、このキャンプで大切なことにたくさん気付かされ、貴重な体験を得ることが出来た。毎日共に笑い合い、時にはぶつかり合い真剣に話し合い泣いた、大切な仲間に出逢えた。
あの夏の九日間は、私の生涯の宝物である。 |
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