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四十雀のお話 安部 孝(安部智子様夫) |
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四十雀は地味な小鳥ですが、のどもとから白いおなかに1本の黒い線を走らせています。それがまるでネクタイのように見えるのが特徴です。
数年前のことですが、このおしゃれな小鳥が毎日のように私の小庭に水浴びに来ていました。少しまわり道になりますが、その由来は庭師の勧めで数個の庭石を据えたことから始まります。庭師が言いました「石は生きています。花に水をやるときには石にもやってください。」と。私は実行しました。一番大きな石の小さい凹みの溜まり水をきれいにしてやりました。
四十雀はそれを狙ってやって来たのでした。いつも二羽でした。ひとしきりばちゃばちゃやるとすぐ隣りの枝に飛び移って入念に身繕いするのが日課でした。一度身繕いがやっと終わったと思ったらまた水浴びです。寒い日でも頭からずばり水をかぶりました。四十雀はよほどきれい好きなのかもしれません。
身繕いのとき、ときおり精一杯に羽根を伸ばすことがありました。ふだんは黒っぽい背中だったのに、ときには実に美しい模様を見せてくれました。
この二羽は拙宅の庭で長いこと遊んでいてもその間ひと声もあげなかったのに、あるとき訪ねた殿谷戸公園の森では思いっきりさえずっていました。庭先ではやはり警戒していたのでしょう。
この二羽はやがて一羽となり、それも間もなく姿を見せなくなりました。偕老同穴という古語を思い出しました。 |
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