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消えたビーズ (幼き日の思い出) 第一サービス室 水口 よし |
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西国参りに行ってきたと言って、祖母が箱に入ったお土産を下さった。
その頃としては、田舎で編んたことも無いようなお土産で、嬉しくて箱をかかえて走りながら、どこで開けようかと思った。
大勢の兄妹で、騒がれないところが良いと想い、静かな裏庭へ走った。嬉しさに少し手が震えて、おそるおそるふたを開けたとたんにパッとビーズが散ってこぼれた。工事の為に盛ってあった砂の上に、色とりどりの色彩をきらめかせていた。
私はあわてて砂を手ですくいあげ、すくい上げてもビーズはズルズルとかすかな砂の音の中に深く消えてしまった。夕方近くまでそれを繰り返しつつくたびれてしまった。
「またよし子はヘマをやったな。」と兄妹達に笑われるのがこわさに、母にも話さないで、毎日毎日砂をすくいあげて・・・。
とうとうビーズは砂の中深く消えてしまった。90歳今になっても、子供の時のあのビーズの想い出はせつなく胸をよぎる時がある。 |
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