ハートをもった女性 前のページに戻る
みんなのほほえみ
・ 巨大柱  施設長 阿 壽子
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出雲空港に降り立った時は、台風が熱帯低気圧に変わり雨だけが残っていた。遅い夏休みをもらい、夫が急に計画してくれた旅である。出雲の割子そばをいただくのみ楽しみであったが、出雲の神様・大国主大神・だいこくさま・縁結びの神様へのお礼が目的である。「縁結び」は単に男女の仲を結ぶと言うだけでなく、お互いの発展のためつながりが結ばれるということである。

出雲平野は実りの時期を迎え、その豊かさに心が満たされるのを感じながら、国道をレンタカーで走っていくといつの間にか夏のなごりの暑い日ざしが照りつけている。

出雲大社境内で今年四月に、古代の本殿の一部と思われる杉材の巨大柱3本が出現し発掘調査が進められている。「日本書紀」には「柱は高く太く、雲を貫く巨大神殿」の記述がある。3本束ねて1本の柱を作り、高さ48メートルの巨大な建物は少しでも神に近づこうとしたものか、力を示そうとしたものか思い巡らすだけでも目が眩む。5年前、「北のまほろば」三内丸山遺跡の巨大柱の下に立ったときにみお同様の眩暈があった。5千年もの時をさかのぼり縄文人の大集落の営みがこの地で繰り広げられていたということに圧倒された。そして営々と今に続く古代からの生命の営みを感じた時、都会の生活にくたくたになった心が忘れていた大いなものが、目の前の草木、大地にも宿っているのだと畏敬の想いが噴き上げてくる。

私の記憶の彼方に存在していたそうした想いを呼び起こしてくれた「旅」は、出雲を後にし、アップダウンのある海岸線に沿って白い雲をおいかけ、左手には日本海、右手の森のアブラゼミの声に急き立てられながら松江に向かう。